感想の前に。まずは、『精霊の守り人』の「『本の雑誌』が選ぶ2007年文庫ベストテン」と「『ダ・ヴィンチ』ブック・オブ・ザ・イヤー2007年文庫部門」でのダブル第一位、おめでとうございます。
去年は本当に怒濤の『守り人』旋風だったなあ。シリーズ完結、アニメ化、文庫化と、なんか凄かったっす。
でも、アニメは質のいい作品に仕上がってて嬉しかったし知人も増えたし、文庫になったお陰で、私の周囲の友人に勧めまくってファンを増やすことができたりと、充実しておりました。
で、当の『夢の守り人』。発売され、購入したのは去年末。何だかんだで、やっと読むことができました。
児童書バージョンで読んだ時、じつは第一印象は「んー、イマイチ?」でしたゴメンナサイ。今だから言えるんですが、ユグノの性格が、当時私が大嫌いな人と同じだったんですよ(笑)
でも、文庫になって読み直した今、ユグノがなぜ、ああいう性格なのか。ものすごく腑に落ちました。夢の子供だから、人間において、最も大切な何かを欠損してるんだと。軽やかに歌える存在だからこそ、何者にも囚われず、大地と魂を結ぶ歌を歌えるのだと。すごく納得です。
そして改めて、『夢の守り人』って、面白いんだということを実感しました。
夢と言うあやふやな世界を扱いながら、しっかり大地に足をくっつけてる素朴な強さは相変わらず。その強さは、自らの過去と向き合い、痛みを忘れない、逃げない勇気からくるものだと。だから、共感するんだと、つくづく思います。
夜と昼の『境界線』、社会に住む者と、そうでないものの『境界線』、人の中の悪意と善意の『境界線』、悲しみと優しさの『境界線』、憎悪と愛情の『境界線』、そして、夢と現実の、生と死の『境界線』。
上橋さん特有の、とても読みやすい文章なのに、そこに描かれているのは様々な『境界』の風景で。それらが多重に混じり合う様は万華鏡を覗くようで、目眩さえ覚えます。一言では語りきれない世界だからこそ、第一印象では、ああいう印象を持ったのかもしれません。
それにしても、アニメ化と言う『呪』の強さには、我ながら笑うしかありません。バルサやタンダ、ジンや狩人達が、あの顔で、あの声で登場するんですもん。タンダvsジン、変貌したタンダに戸惑うバルサなんか「動く絵で見たい」欲がむくむくと。
ただ、トロガイとチャグムは、何故か二木さんの挿画バージョンなんですよね。なんでだろう(笑)
絵だけではありません。チャグムが庶民の生活を懐かしむ一文を読んだ瞬間、賭事の話や相撲のエピソードがばーっと脳裏に甦ったのはびっくり。あと、ラストでバルサがジグロとの生活を振り返った下り、もしかすると、あのアニメのエピソードは、彼女のこの言葉が着地点となるよう構成したのかなとも思ったりします。
うーん、アニメ版おそるべしだ(笑)