一回目読み終わった時、実は「はあ?」だったことをカミングアウトしよう(笑)。なんか訳分かんなかったと言うか、話の流れが荒いというか。いつもに比べて覇気がないというか。「人物のかき分けが巧くない」「場面転換が曖昧」と言う、この作者のクセが今回裏目に出た模様です。
ただ二回目以降読み返すと、俄然面白くなるのもこの作者の特徴で(笑)。
ゲストキャラと主役各キャラとの繋がりや、ストーリーの流れが頭に入ると、「業や欲を現した人間への、エグイ角度のつっこみ」と言う、作者のカラーがよく見えてくる模様です。
妖魔や幽霊が、人間のすぐ隣に存在する世界は、相変わらず、旧家の土間の湿った暗がりの匂いがしていて、私はそんな場所が好きです。
ストーリーはこんな感じ
『二つの箱』:
舌切り雀そのまんま。最後は一応ハッピーエンドだけど、後味は良くないはず。妖魔のやることは容赦ないねえ。
『とぎれた蔓』:
「女には絶対受け入れられないけど、男が見ると保護欲をかき立てられる女・粧子」と「そんな女に惹かれて、うつろを彷徨う男・陸」の話。粧子みたいな女がいたら、私も絶対嫌うと思う。だから、粧子と言う人物造形に興味を持ったのかもしれません。話自体は短い方です。
『小さい虫』:
尾白尾黒の引っ越しの話…じゃなくて。子供を喪った桜が、姪を受け入れられるまでの話が主軸。幽霊の描写がすっげえイヤ。
『鬼の嫁取り』:
律のおじいちゃんと、おばあちゃんの馴れ初めの話。赤間も絡んでるので、やっぱり後味に濁りが残ります。でも二人が可愛いので帳消し(笑)
『白い顎』:
母方の親類初登場。雪女を絡めて、おかあさんの秘められた過去と、親族との和解の話。名無しの子供の幽霊が切ない(実は律くんの…)。「お母さんの名誉のため」に、風邪っぴきで雪の中を右往左往する律くんは、実は結構健気でもあったりするw
『夜泣きの桜』:
人間の猜疑心を煽る幽霊にあてられ、不和を起こした家族が「そうでないこと」に気づく話。いや、それよりも一番のアレは「司ちゃんに彼氏が出来た!」ことだろう…(笑)
尾白と尾黒の無能っぷりに、時々イラっとするけど、「100%役に立つ尾白と尾黒」を想像すると、あまりにつまらなくて。人間の役に立たないから、妖魔って面白いんだよなあと再確認したのであった。
そして「人の心が分からない」とおかーさんに窘められるより、「妖魔の心が分からない」と尾白尾黒に怒られたことに激しく落ち込む律くんが、一番のヒットでございました。