ガンダムエース関連の単行本の購入は、トニたけ漫画以来です。何しろオレサマガンダムのオンパレードは、一度観ればそれでもうお腹一杯なもんで(笑)。その中でも、Ark Performanceを名乗る製作集団が手がけたガンダムは、ひと味もふた味も変わってました。
ア・バオア・クー戦に参加した連邦/ジオンの一兵士へのインタビューで構成された、一話完結のファーストのサイドストーリーです。
登場人物達は、いわゆる名も無き一兵卒。『学徒兵』『亡命艦隊』『帰還兵』『衛生兵』と言うタイトルで語られるのは、それぞれの立場、一個人から見た戦争の体験にすぎません…が、それぞれの想いが伴って、戦闘ばかりなガンダム漫画より面白いのが不思議。そして彼らの目からみたガンダムや木馬、ギレンの死が実にリアルで新鮮です。
絵の精密さもあるのですが、語ってるのが「おじさん」なのがいい!(笑)
いや、ガンダム=美少年美青年ばかりなもんで、おじさん度が全然足りないから、それがアレなもんでHAHAHA!作り手の都合で言えば、視聴者や読み手の年代を考えると青少年の方が感情移入しやすい、ってのは分かるんですけどね!
ニッチな部分に着目してますが、『ギレン暗殺計画』や、新作『ジョニー・ライデンの帰還』に繋がる視線も挿入されてるあたり、ただの実験作品とは思えません。
とは言うものの、単品でも充分面白く仕上がってます。
さて、Ark Performance作品を最初に読んだのは、ダムエー連載の『ギレン暗殺計画』でした。
舞台は終戦間際のズム・シティ。主人公は公安警察のレオポルド。要人連続暗殺事件の捜査を進めるうち、ギレン暗殺計画に巻き込まれていく…というもので。
『ヒトラー暗殺計画』がヒントになっていると思われるこのストーリー展開は、『攻殻機動隊S.A.C』とか『踊る大捜査線』とか、『映画版パトレイバー』好きには、この「ガンダムとは思えないポリティカルサスペンス」がたまらなかったんですなw
加えて、今までありそうで、実は誰も真剣に描かなかった『銃後のジオン』の風景が緻密に描かれてるのもツボでした。戦場とは無縁なズム・シティにも、ちらほら見える戦争の影も押しつけがましさのない距離感にまとまってて好感触。
ただ、絵の綺麗さが災いしてか、MS戦が分かりにくいのが難点。背景と効果線がメカに溶け込んで、『主役』がはっきり見えない時があるんですわ。迫力とスピード感を出そうと苦心してるのがよく分かる分、もっとがんばってーと思わざるを得ません。
とはいうものの、後半のズム・シティは、『コロニー内戦闘の有り様』に終始。敵の戦闘力をいかに無力化するかに徹底した戦略は、簡単に何でも壊して、威力を見せびらかすようなガンダム漫画とは一線を画しています。
主人公とされるレオは狂言回しで、実はランスやアンリが主人公ですね。だけど、レオポルドは状況に振り回されながらも、最後は自分が何者なのかを理解し、すべきことを実行したあたり、大人なんでしょう。
…まあ、レオに関して言えば「じーちゃんのチートさマジぱねえ!」に終始するんですが(笑)
二重三重に仕掛けられた伏線をほとんど回収しており、その上であえて回収されない伏線=『語られない真実』があり、闇の深さを想像させるもの。と言うか、この4巻のドラマそのものが、一年戦争後に作られた『再現ドキュメンタリードラマ』と言う拵えなのも面白いところ。つまり、「本当のように語ったこのドラマ、だけど全てが嘘かもしれませんよ」と言う含みを持たせてるあたり、憎いことこの上ないです。
作者はガンダムと言う市場に参加したのが初めてらしく、その特殊さに相当戸惑ったとのこと。ただ、『ギレン暗殺計画』で学んだことは、現在連載中の『ジョニー・ライデンの帰還』できっちり返してくれそうなので、そのあたりを期待です。